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蛇石といわれる置物 |
自然にできた模様だが
信仰の対象白蛇に
似ていることから
蛇石として祀られた |
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蛇が神の使いとされるのは、蛇自身がすぐれた霊力を持っているからだ。陰陽師はこの霊力を、術のなかで巧みに利用してきた。
たとえば「蟲毒」という術がある。「蟲」という文字は、「虫」が集まる様子を表している。ただし、「虫」といっても昆虫ではない。「虫」という文字は、頭が大きくてグロテスクな蛇、マムシが鎌首を持ちあげた姿なのである。
この術では文字どおり、蛇やムカデなどの「虫」を壺に閉じ込め、共食いさせて生き残ったものだけを「神霊」として祀る。生存競争に打ち勝ち、「神霊」となった蛇の力を利用して術をかければ、災いも幸福も自由自在に操れるというのだ。
と聞くと、なんともおぞましい術だと思われるかもしれない。しかし、蛇の霊力そのものには、善や悪といったベクトルはないらしい。成道師はそれを、こう説明する。
「蛇というと、どうしても邪だとか、冷たいだとか、マイナスのイメージが先行します。でも、蛇そのものが邪悪な存在なのかというと、決してそんなことはありません。
もちろん蛇には、相手を襲う凶暴性もあります。蟲毒に使われるのはそのせいです。しかしその凶暴性は、生存本能に素直だということでもあるわけです。逆の見方をすれば、そんな使われ方をするほど蛇の霊力は強い、ということの証明なのです」
これにはもう少し、説明が必要かもしれない。
成道師は、陰陽師が動物の霊力を術に利用するときに重要なのは、なんといっても性質が素直であることだという。ただ単に霊力が強いだけなら、キツネやタヌキも相当な強さがある。しかし、これらの動物は性質にクセがありすぎて、術者のいうことを聞かないことが珍しくないというのだ。
しかし、蛇はそんなことはまったくない。陰陽師のどんな要求にも素直に応えてくれる。呪いと護身という相反する目的であっても、同じように力を発揮する。
「素直だということは、陰陽師の念を込めやすいということでもあります。力が強くて扱いやすいわけだから、蛇は術には最高なのです」
成道師の言葉をかりれば、蛇の霊力は「術の力を強める増幅剤、あるいはブースターとして最適」なのである。
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